失った身体~かや苅りで学ぶ思いやり~

かやは、この町に住んでいる誰もが目にしたことのある植物ではないでしょうか。
ある農家さんではこのかやを、苅って、カッターという機械で短い状態に刻んで、ワラや落ち葉と一緒に高くつんで肥料を作ります。
たたみごえと呼ばれます。
その素材としてかやを草苅機で苅るのですが、これがはなかなか難しい。
慣れないと、たいぎい作業です。
というのも、苅ったかやを、ある程度の太さの束にまとめる(方言で「そくう」というのですが)作業をしてもらう人がそくいやすいように苅る必要があるからです。
闇雲に草苅機を振り回していると、パスタ茹でるために鍋に入れるときのように、バラっと広がってしまいます。
さらにひどくなると、もうあちゃこちゃに散らかってしまい、そくう係りの人は大変苦労します。
いくつか先輩から教えていただいたポイントがあります。
①一方から苅る 例えば右から左に苅っていって端まできたら、最初の位置までもどて、再びかやのあるところを右から左に苅っていきます
②草苅機を一定の範囲で動かす 腕を無理に伸ばしたりせずに、身体を回して腕が届く範囲をたもちながら前進します。一定の幅を保っていれば苅った筋が蛇行していても大丈夫です
③苅ったかやがだんだんになるようにする 1列目に苅ったところが筋になります。
2列目に苅ったかやがそこに覆い被さらないように、前の筋が残るように上のほうを苅ります
④そくう係りも体験してみる! 相手の大変さ、しんどさが身をもって経験できます。そうすれば自分で苅るときにより気をつけることができます
とにもかくにも、農業の大先輩の教えを実践しつつ、自分であれこれ試行錯誤しながらやってみると、たくさんのことに気づかされます。
協力するって、やっぱり人の身体と身体の思いやりなのかなぁ。
自分も相手も気持ちよく身体を使えるようにする工夫を、昔の人は知っている。
でも、僕たちは恐らくその智恵を失っていきつつあると思います。
だから農業って魅力的だと思います。